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ロック母

『ロック母』角田光代:講談社
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1992年から2006年までに書かれた小説をおさめた短編集。

角田さんの小説はいつも容赦ないまでに救いがなく、それを読むと「本当は現実ってこうなんだよな」と思えてしまうリアル感がすごいと思います。好みで言えば、もっと夢のある読後感のよい小説が好きなのですが、それでもなぜか手に取って読んでしまうすごさがあるのです。

14年間に渡って書かれたこの短編集のどの主人公も、恵まれた環境にもなく、性根が美しくなく、向上心もなく・・・という人ばかり。一貫しているのです。例えば表題作「ロック母」の主人公もなんとなく妊娠して、堕胎は怖そうだからとずるずると先延ばしにしているうちに臨月になってしまった・・・という超ダメ人間。ちやほやしてほしいからという理由だけで、嫌悪していた田舎の実家に帰るが、母は大音量でロックを聞き続けるという常軌を逸脱した行動をとるようになっており、父はそんな母にひたすらおびえている。・・と容赦ない設定は続くのです。いよいよ出産を迎えるシーンでも、主人公は感涙にむせび泣いたりしない。きっと産まれてくる子供も大きくなったら、どこかにいるはずのもっといい自分を思い描いて田舎を出て行くんだろう、そんな自分はどこにもいないのに、と想像する主人公。・・・うーん、むなしすぎる。

雑誌等でよく拝見するニコニコとかわいらしい丸顔の角田さんから、どうしてこんな小説が産まれるんだろうと、いつも不思議でたまりません。頭の中をのぞいてみたい。これからも目が離せません。
by shihorish | 2007-08-21 01:49 | 本・漫画
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